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日本赤十字社 岐阜県支部

http://www.gifu.jrc.or.jp/


日本赤十字社 岐阜県支部


組織振興課 嘱託(振興担当) 末松 京子さん


情報管理やウェブサイト更新などの作業に集中する、末松さん

所在地 岐阜県岐阜市茜部中島
障がい者雇用数 1名 ※2018年12月末時点
事業内容 国内災害救護活動 / 国際復興支援・開発協力 / 血液事業 / 青少年赤十字など
障がい者の
業務内容
  • 寄付者の情報管理
  • パソコンでの入力業務
  • 専用ソフトでのウェブサイト更新

災害時の救護活動において世界190カ国にネットワークを持つ日本赤十字社。その前身「博愛社」は、西南戦争での負傷者救護がきっかけでした。
今回は、岐阜市茜部にある日本赤十字社 岐阜県支部を訪ね、組織振興課で活躍されている末松京子さんと、総務課長の朝比奈美華さんにお話をうかがいました。
他者との関わりを大切にするお二人のお話から「人の命を尊重し、苦しみの中にいる者は、敵味方の区別なく救う」という設立からの志が伝わってきました。

「ありがとう」が、お互いの連携と理解を深める

「働いていなければ出会えなかった人たち。仕事は、年齢も性別も問わない。」

末松さんが入社に至った経緯について聞いてみました。
末松さん:
今年で入社2年目です。特別支援学校3 年生の時の実習がきっかけでした。進路の先生に勧めていただき、3週間の実習を経て採用になりました。私は体験から学ぶタイプで、実習は何でもチャレンジしてみようと思っていました。車椅子のため、最終的にバリアフリーの整った職場環境が決め手になりました。

実習期間と、実際に働きだしてからのギャップはありませんでしたか?
末松さん:
実習中は何をしている事業所なのか、あまり分かっていませんでした。働きながら日本赤十字社の仕事について理解を深めていきました。担当している業務は、寄付者の情報管理、パソコンでの入力業務、専用ソフトでのウェブサイト更新です。地域のイベントでお子さんと触れ合うこともあります。研修へ行かせていただく機会もあり、デザインソフトの研修に参加して、職場のパソコンにデザインソフトを入れてもらいました。

様々な業務を任されていることに対して、職場からのフォローはありますか?
末松さん:
日常的に「ありがとう」が飛び交う職場です。最初は分からないことも多かったのですが、不安に思ったことを聞くと、職場の方からはすぐに答えが返ってきます。「仕事に慣れてしまうと気づけないこともある。分からないことはどんどん聞いて。」と言われました。私の仕事は他の課とも連携する必要がありますし、こうしたコミュニケーションの繰り返しで、お互いの理解を深めていきました。

入社1年目との違いはありますか?
末松さん:
2年目に入る前はプレッシャーを感じましたが、今は懐かしい感じです。教えてもらう立場だったのが教える立場になり、自分もきちんと理解できていない部分に気づきます。お互いの仕事の進め方を知る機会にもなっています。私はこまごまとした作業が好きですね。研修で教わったデザインソフトの技術を生かしたい。イベントも多いので、外注先との仲介役となれるようスキルを上げたいです。

仕事へ取り組む姿勢に影響を与えたロールモデル(お手本)はいらっしゃいますか?
末松さん:
きっと母ですね。私を助けながら働いている母の姿をずっと見てきました。抵抗なく自分の仕事の話をしてくれる人です。母が仕事で悩んでいて「今の若い子ってどう?」と聞いてくれるし、私も「これってどう思う?」と聞ける。お互いが仕事の相談相手になっています。実習を経て働くことが現実的になってきたとき、家族や学校の先生などの「身近な大人」がお手本になっていると気づきました。

前向きな姿勢が素敵な末松さんですが、そのエネルギー源は何でしょうか?
末松さん:
休日に好きなことをしている時の友人との関わりですね。車での通勤も気分転換になっています。運転免許を取ったことで行動範囲が広がりました。スポーツも好きです。小学生から高校生まではテニス、バスケット、カヌーのプレイヤーでした。今年20 歳になり、お酒にも興味があります。お酒は人と関わりやすくなるツールだと思っていて、楽しめるようになれればと思います。

休日も充実していますね。末松さんにとって「働く」とは、どんな意味を持つものでしょうか。
末松さん:
生活に必要なもの。働いていなければ出会えなかった人たちがいて、働くことは、年齢も性別も問わない。この2年間で視野が広がりました。今までやってもらう側だったのが、自分もできるようになるのが嬉しいですね。自分のことを見つめ直す時間も増えました。

前向きに「挑戦」できる職場環境

「障がい者というレッテルを、自分自身に貼ってしまわないこと。」

これから働くステージへ向かう後輩に向けて、伝えたいことはありますか?
末松さん:
企業見学や実習から、様々な働き方があることを知りました。
ありがたいことに、私は在学中10社ぐらい体験させていただきました。学生のうちは、積極的に学外へ働きかけることが必要だと感じます。やっていて無駄だったことは何もないと思います。スマートフォンなど身の回りの機器にも慣れておくことで、「つながりの維持」にも役立ちました。

最後に、仕事を問わず「末松さん自身が大切にしていること」はありますか?
末松さん:
障がい者というレッテルを、自分自身で貼ってしまわないことでしょうか。特別支援学校には色々な方がいらっしゃいました。自分でレッテルを貼ってしまうと、相手も関わりにくさを感じてしまう。「やってみて、失敗して、やっぱりできなかった」でいいと思います。無理をして何かあってもいけないのですが、気遣われ過ぎてやりたいことができないのも悲しい。だからこそ「やってみよう」と「できない」が重要です。私もそのバランスが難しいのですが、無理な時に無理と言える今の職場環境はありがたいです。
私にチャレンジさせてみようと思ってくれていますし、私自身も「やってみよう」と思うことができています。

親身に聞き、受け止め、正しく伝える

「人材は宝物。その方をどのように活躍させていくかは、その組織の在り方でもある。」

末松さんと共に働く総務課長の朝比奈さんにお聞きします。雇用側から、末松さんとの出会いをお聞かせください。
朝比奈課長:
私たちの仕事は、災害が起こると職員が派遣されて、事務所には一人で残されることもあります。サポートする相手として障がい者雇用をされている企業は多いのですが、自分たちが一緒に働くのは初めてで、どうしたらいいのだろうと非常に悩みました。雇用が決まった際、障がい者雇用企業支援センターにもお願いをして、社員研修を受けました。末松さんの上司は「最初から壁をつくることはしない・いろいろなことを体験させる」というスタンスです。末松さんがのびのびと仕事をしてくれることで、私たちの喜びにもなります。

末松さんは「障がい者というレッテルを自分自身で貼らないこと」とおっしゃっていました。
朝比奈課長:
末松さんは最初からそうでしたね。ですから「できないことを、できないって言えない状況」を作らないようにしようと心掛けました。心に余裕がないと、人に接する余裕も無くなりますよね。

なにげない会話を大切にされているのはなぜでしょうか。
朝比奈課長:
私たちの仕事は、寄付などのお金をいただいて事業が成り立っています。お金をいただくということは、皆さんの気持ちをいただいて、皆さんの代わりに事業を行うことです。困っている方の意見を親身に聞き、受け止め、正しく伝える。そのためにはコミュニケーションが大切です。意見が異なる方も沢山いる中で、相手の立場に立つと「そう思うこともある」と受け止めるようにしています。また、電話対応や窓口対応などもお待たせしないよう心掛けます。ですから、分からないことを分からないままにしないよう、末松さんには伝えています。そのままにしておくと、職員間だけではなく対外的にもご迷惑がかかります。分からないことは分かるまで聞き、納得いくまで伝えることが、私たちの役割だと思っています。

社内業務だけではなく、社外への研修や地域イベントのお話も出ていました。
朝比奈課長:
人材は宝物です。その方をどのように活躍させていくかは、その組織の在り方でもあります。自分たちで教えられないことを無理に教えるのではなく、外との繋がりを持ってたくさん吸収してきていただく。仕事以外の繋がりを持ってもらうことが、自分の財産になっていきます。研修の内容だけではなく、人との繋がりを作っていくことも、学びの一つだと考えています。

障がい者雇用に取り組む企業へのアドバイス

「障がい者雇用の秘訣 = 気軽に相談できる窓口を見つける。」

朝比奈課長はこのお仕事を長く続けられていますが、働き続けるコツはありますか?
朝比奈課長:
私の場合は仲間ですね。古くからの付き合いがあって「悪いことを悪い」と言ってくれる人を作っています。そうじゃないと天狗になってしまう。なんでも言い合える相手を作ることです。そして、ストレスへの対処方法を沢山持っていること。私は映画鑑賞や美術館めぐりが好きですね。

障がい者雇用について悩んでいる企業や採用担当者にとって、必要なことは何でしょうか?
朝比奈課長:
私たちは一度雇ったら長く働いてもらいたいと考えています。採用を検討する前段階で、気軽にいろんな相談を受けてくれる窓口があるといいですね。採用する側にも悩みがあります。自分が知った情報は、できるだけ社内の他部署にも伝えています。それから、体験の場を設けた方が良いと思い、他の学校からも数名の体験実習生を受け入れました。こんなに素直で、こんなに意欲のある学生さんがいるのだと知り、驚きました。企業側もそうした経験の場を作ることで変わるのではないでしょうか。私たちも分からないことを教えてもらいながら、現在の雇用につながっています。分かったふりは一番危険です。分からないと言った方が、色々教えてもらうことができますし、適切なサポートを得られます。

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