リーディング企業情報

大王製紙保安検査システム株式会社

http://daio-hoan-kensa.com/

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所在地 岐阜県可児市
障がい者雇用数 6名 ※2019年10月末時点
事業内容 警備、試験分析、清掃
障がい者の
業務内容
  • 社員食堂での昼食準備と後片付け
  • トイレ清掃
  • 工場内の道路清掃
  • 廃棄用紙の回収

「やさしく触れていいですか。」というキャッチコピーが印象的な、ティッシュ・トイレットペーパーをはじめとする「エリエール」シリーズ。1979年に発売され今年40周年を迎えるロングライフデザイン商品です。私たちの暮らしに欠かせない紙製品を製造している大王製紙株式会社、その特例子会社「大王製紙保安検査システム株式会社」可児事業所を訪ねました。今回お話をうかがったのは所長の水谷 路人さん、障害者職業生活相談員※1 の末松由佳さん、そして障がい者雇用で勤務されているKさん、Wさん、Yさん、Nさんです。これまでの取材では最も多いインタビュー人数となり、それぞれの役割・視点からのお話をうかがうことができました。

所長 水谷 路人さん 勤続20年以上 / 障害者職業生活相談員 末松 由佳さん 勤続1年 / Kさん 勤続11年60代 / Wさん 勤続2年 / Y さん 勤続5年 / Nさん 勤続3年

※1 障害者職業生活相談員 「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、障害のある従業員が5名以上働いている事業所には「障害者職業生活相談員」を置くことが義務付けられています。厚生労働省が定める資格を有する従業員から選任し、認定講習を受けたのち職業生活全般における相談・指導を行います。

気持ち良く働ける環境の整備

「個々に見る」ということを、まさに実感しています。

大王製紙保安検査システム株式会社の創業は昭和41年と伺っています。可児事業所での障がい者雇用について教えてください。

水谷所長:
弊社は工場内の警備業からスタートして、工場の構内緑化、社員寮や福利厚生施設の管理、検査業務、そして障がい者雇用と進んできました。可児工場はもともと名古屋パルプ株式会社だったのですが、2007 年に大王製紙との吸収合併で大王製紙可児工場となっています。可児事業所での正式な障がい者雇用は2018年度からのスタートです。もともと可児工場で採用されていた方を含め、身体障がいの方1名、知的障がいの方4名、2019年4月からは精神障がいの方を1名雇用しました。愛媛の本社では精神障がいの方を5名雇用していますが、可児事業所では初めての雇用でした。

6名の方はそれぞれどのように雇用されたのでしょうか。

水谷所長:
お一人ずつ順番に採用していきました。いちばん年長の方で勤続11年目になります。主なネットワークとしては可茂特別支援学校、ひまわりの丘障害者就業・生活支援センター、ハローワークなどですね。

勤続年数の長い方が多いのですね。みなさんの仕事へのモチベーションはどこにあるのでしょうか。

水谷所長:
基本的には「綺麗になる」ことにやりがいを感じてくれているのかな。サービス業ですから、社員が気持ち良く働けるような環境の維持に対して、プライドを持って働いてもらっています。

みなさんとのコミュニケーションは普段どのように取っていらっしゃいますか。

水谷所長:
毎日の朝礼と終業時の夕礼での会話、業務日誌などですね。期の初めや月初には業務目標も共有します。それから日頃の悩みなどをざっくばらんに話す場として、昼食会を3ヶ月に1回行っています。私は赴任3年目ですが、当初は指示や細かな業務調整を直接行っていました。1年前に入社した末松に障害者職業生活相談員を取得してもらい、現在は従業員との連絡調整や相談役を末松に担当してもらっています。本社の雇用ノウハウを可児事業所にも展開しています。現在は精神障がいの方へのアプローチを試行錯誤しているところです。

関わり方の違いはありますか。

水谷所長:
全く違いますね。本人のできることを認めていく対話を重ねています。障がいというよりは「個々に見る」ということを、まさに実感しています。サポートに関わる従業員自身が抱え込み過ぎてはいけないと思います。担当支援者さんとの面談に同席して、ヒアリングの仕方などを学んでいるところです。

安心して働けるコミュニケーション支援

障がい者に対する差別。今まで色々なことを感じ取ってきました。

では、働いていらっしゃる4名の方にお話をうかがいます。

Kさん:
私は今年11年目です。もともと流れ作業の仕事に就いていましたが、背骨の手術をしていて重たいものを持てないので、ハローワークから仕事を紹介されて入社しました。こうして若い男の子たちと働くのは初めて。最初は戸惑いがありましたが、今はお母さんのような役割で接しています。担当業務は社員食堂での昼食準備と後片付け、工場内の女子トイレの清掃で、11 年間ずっと同じ仕事を続けています。工場内のトイレは50箇所近くあって、先輩に教わりながら地図に自分なりの目印を書き込んで覚えていきました。工場内は全部頭に入っていますよ。製紙工場はとにかく広くて、常に歩いています。体力もつくので仕事が続けられていますね。

Yさん:
僕は入社5年目です。ハローワークで求人を見て応募しました。観光地で働いていた1社目の時に背骨を損傷してしまい、2社目の警備会社では3年ぐらい働きました。これまでの仕事経験があったから暑さ寒さには慣れていました。コミュニケーションの面でも前職との違いはあまり感じませんね。みんなと同じ業務に加えて、年間予定表を組む役割なども担当しています。

Nさん:
僕は平成28年に入社して3年目です。以前は岐阜障害者職業センターの支援を受けていました。職業訓練中にこの会社の求人を見つけて、1週間の実習後に入社しました。業務は男子トイレ清掃、工場内の道路清掃と廃棄用紙の回収です。最初は工場内を覚えるのがとにかく大変でしたけれど、それでも仕事へ行きたくないと思ったことはないですね。数をこなすうちに場所も覚えて、今は無理なく働いています。

Wさん:
僕は入社2年目です。最初に勤めていた会社が倒産してしまい、次に特別支援学校の用務員として働きました。そこでの清掃経験もあり、チャレンジトレーニング実習から入社しました。担当は男子トイレ清掃、工場内の道路掃除です。先日から道路スイーパーを使う業務にも取り組んでいます。

新しい仕事を任される時、不安はありませんでしたか?

Wさん:
心配になったこともありました。でも仕事をしていくうちに少しずつ出来るようになっていきます。無理をしないこと、難しく考え過ぎないことかもしれません。

これまでに経験してきた職場との違いはありますか。

Wさん:
前は一日中立ち仕事だったのですが、今はあちこち動き回ります。自分に合っていたのかな。

他の社員との交流や仕事へのフィードバックはありますか?

Yさん:
工場内の社員からはしょっちゅう声をかけられますよ。蛍光灯が切れているとか、ゴミの捨て方が分からないとか。「置いといてもらえたら分別しますよ」って声掛けると「すいません、じゃあお願いしますね」って言われます。

Kさん:
私も掃除していると「ありがとう」と声をかけてもらえますよ。

長く働き続けて経験豊富なみなさんですが、働くことへの想いはありますか。

Kさん:
求人募集をしてもなかなか人が集まりにくく、やはりどこか障がい者に対する差別があると感じます。それをなくしていくにはどうしたらいいか。私は生まれつきだから学校でも敬遠されてきましたし、長く働いてきた分だけ色々なことを感じ取ってきました。私の友人や目上の方に相談して学びながら、仕事では上司とも相談しながら改善を重ねてここまでやってきました。障がい者ができる仕事をしながら、多くの人とコミュニケーションを取ることができたらいいと思うんです。そんな世の中になることを望みます。障がい者を受け入れる世の中になっていってほしいというのが、私の願いです。

みなさんとの関わりが仕事へのやりがいです

いいチームだからこそ、次のレベルアップを目指して模索中です。

障害者職業生活相談員の末松さんから見たみなさんは、それぞれどんなお人柄ですか?

末松さん:
Kさんは経験も長く何でも知っていて、どこにでも掃除に行くし細かいことにも気がつかれます。Yさんは何でも直しちゃう器用な方。WさんとNさんのお二人はムードメーカーでモノマネが上手です。私はその様子を楽しく見ています。

普段はどのようにみなさんと関わっていらっしゃいますか。

末松さん:
午前中は正門(警備)にいて、午後は検査業務に入っています。突発的なことがあった場合、私がいる場所まで報告に来てもらっています。声をかけやすい雰囲気づくりを心がけていて、そのために私は一人での業務も必要だと思っています。相談したい時、周りに人がいると声をかけづらいですよね。

1 年前に入社されたとのことですが、相談員として悩まれていることもあるのでは。

末松さん:
私が入社する前からみなさん仕事をしているので、苦労という苦労はありません。ただ、昨年12 月頃から業務開拓で清掃箇所が増えました。きれいな環境づくりをして、工場内で働く他の社員に喜ばれると、仕事への張り合いも出てきます。次のステップアップとして《自分たちの仕事により誇りを持って取り組む方法》を試行錯誤しています。

働くスタイルが完成しているからこそ、次の課題があるのですね。

末松さん:
極力、清掃などの業務も一緒に回るよう心掛けています。まずは私自身が構内の場所を覚えないといけません。水谷とは違う立場で接するのが私の役割かなと思っています。他の社員との垣根を少しでも低くしていけるように。まだまだ模索中です。

次への目標や課題がある一方、お話を聞いていて素敵なチームだと感じました。

末松さん:
メンバーが優しいんです。言いたいことを言えるメンバーと、受け止めるメンバーとのバランス。それがマッチしているのかな。もちろんその雰囲気が合わない方もいらっしゃると思いますね。

末松さんご自身の仕事への想いはありますか。

末松さん:
同僚には「色々任されて大変そうだね」と言われるけれど、今とてもやりがいを感じています。以前は市役所に勤めていて、虐待などに対応する相談員の存在や困っている方々に寄り添う同僚の姿を見てきました。この仕事に就いたのもご縁かなと思います。微力ながら役に立てていれば。みなさんとの関わりが仕事へのやりがいですね。

障がい者雇用に取り組む企業担当者へのアドバイス

「人が育つ環境」というのは、悪いことも含めて意見が言える環境のことです。

障がい者雇用では「障がいのある方にどんな仕事をしてもらえばいいのか分からない」という企業側からのご相談も多く寄せられます。

水谷所長:
慈善事業ではないですから、仕事を作らないといけないですよね。従業員には少しずつ仕事の幅を広げてもらっています。必要な業務、たとえば草刈り機などの講習に行ってもらうこともあります。一方で「決められたことをやり続ける」こともまた能力ですよね。個々人の能力が違っていますし、今後どのような仕事を任せていくのかが課題です。

障がいのある方が働くために必要なことは何でしょうか。

水谷所長:
働く意欲が少しでも垣間見えること、働きたいという気持ちがあること。でもそれは「障がいの有無に関わらず」ですよね。実は以前、金銭管理が難しくて辞めた方がいました。彼は事情があって親元を離れて暮らしていた。小出しにお金を渡して使い込ませないようにしたり、家まで訪問して職場まで連れてきたり、髪がボサボサだった時は散髪屋に連れていきました。

水谷さんがそこまでして関わり続けようと思われたのは、なぜでしょうか。

水谷所長:
どこか憎めない方でしたね。仕事を辞めてしまったら暮らしが潰れてしまうので、そうはさせたくなかった。だから絶対辞めるなと引き止めたのですが。いま思えばそれが苦しくなっちゃったのかもしれません。

後進を育てていくために、水谷所長が大切にされていることは何でしょうか。

水谷所長:
出来るだけこちらが意図することに対して「いかに自分で気づいてもらえるか」という教え方でしょうか。以前は直接的な指示でしたが、あとから「仕事の目的が分かっているのかな?」と感じることもあって。「人が育つ環境」というのは、悪いことも含めて意見が言える環境です。悪いと思っていることは誰しも隠しちゃう。多くの企業を見ても分かるように、上司が偉そうにやっていては何も残らないんです。社員が自主的に仕事に取り組むためにはどうしたらいいかを考え、相手のことを待つようになりましたね。歳を重ねて、なんとなく思うことです。

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