改正雇用促進法

雇用の分野では、障害者に対する差別が禁止され、合理的配慮の提供が義務となりました。
《障害者の雇用の促進に関する法律》を改正し、平成28年4月1日から施行。

ポイント1 雇用の分野での障害者差別を禁止

募集・採用、賃金、配置、昇進などの雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由とする差別を禁止する。
〈募集・採用時〉
◆単に「障害者だから」という理由で、求人への応募を認めないこと
◆業務遂行上必要ではない条件を付けて、障害者を排除すること
〈採用後〉
◆労働能力などを適正に評価することなく、単に「障害者だから」という理由で、異なる取り扱いをすること、など

〈禁止される差別に該当しない場合の例〉
◇積極的な是正措置として、いわゆる障害者を有利に扱うこと
例:障害者のみを対象とする求人(いわゆる障害者専用求人)
◇合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果として障害者でない人と異なる取扱いをすること
例:障害者でない労働者の能力が障害者である労働者に比べて優れている場合に、評価が優れている障害者ではない労働者を昇進させること
◇合理的配慮に応じた措置を取ること
(結果として、障害者でない人と異なる取扱いとなること)
例:研修内容を理解できるよう、合理的配慮として障害者のみ独自メニューの研修とすることなど

ポイント2 合理的配慮の提供義務

事業主は、合理的配慮として、例えば以下の措置を提供していただく必要があります。
<募集・採用時>
◆視覚障害がある方に対し、点字や音声などで採用試験を行うこと
◆聴覚・言語障害がある方に対し、筆談などで面接を行うこと <採用後>
◆肢体不自由がある方に対し、机の高さを調節することなど作業を可能に する工夫を行うこと
◆知的障害がある方に対し、図などを活用した業務マニュアルを作成したり、業務指示は内容を明確にしてひとつずつ行なったりするなど作業 手順を分かりやすく示すこと
◆精神障害がある方などに対し、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・ 体調に配慮することなど
事業主には、これらの措置を、過重な負担にならない範囲で提供していただきます。
合理的配慮は障害者一人一人の状態や職場の状況などに応じて求められるものが異なり、多様かつ、個別性が高いものです。
したがって、具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と事業主とで よく話し合った上で決めていただく必要があります。合理的配慮は個々の事情がある障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべきものです。

ポイント3 相談体制の整備、苦情処理、紛争解決の援助

事業主は、相談窓口の設置など、障害者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備が求められます。また、事業主は、障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされています。

自主的解決が図れない場合は、都道府県労働局長が当事者からの求めに応じ、必要 な助言、指導または勧告を事業主又は障害者に対して行うとともに、必要と認めるときは第三者による調停を行わせます。

ご不明な点は、お近くの都道府県労働局・ハローワークにお問い合わせください。
詳細については、厚生労働省ホームページ「障害者雇用対策」に関係資料が掲載されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要

【改正雇用促進法】
雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)を定めるとともに、障害者の雇用に関する状況に鑑み、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える等の措置を講ずる。

1.障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応

(1)障害者に対する差別の禁止
雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止する。
(2)合理的配慮の提供義務
事業主に、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を講ずることを義務付ける。ただし、当該措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除く。

(想定される例)
・車いすを利用する方に合わせて、机や作業台の高さを調整すること
・知的障害を持つ方に合わせて、口頭だけでなく分かりやすい文書・絵図を用いて説明すること
→(1)(2)については、公労使障の四者で構成される労働政策審議会の意見を聴いて定める「指針」において 具体的な事例を示す。

(3)苦情処理・紛争解決援助
①事業主に対して、(1)(2)に係るその雇用する障害者からの苦情を自主的に解決することを努力義務化。
②(1)(2)に係る紛争について、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の特例(紛争調整委員会による調停や都道府県労働局長による勧告等)を整備。

2.法定雇用率の算定基礎の見直し
法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加える。ただし、施行(H30)後5年間に限り、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えることに伴う法定雇用率の引上げ分について、本来の計算式で算定した率よりも低くすることを可能とする。

3.その他
障害者の範囲の明確化その他の所要の措置を講ずる。
施行期日:平成28年4月1日(ただし、2は平成30年4月1日、3(障害者の範囲の明確化に限る。)は公布日(平成25年6月19日))

①障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務について
◎障害者に対する差別禁止※1、合理的配慮の提供義務※2を規定【施行期日平成28年4月1日】。
※1 不当な差別的取扱いを禁止。このため、職業能力等を適正に評価した結果といった合理的な理由による異なる取扱いが 禁止されるものではない。
※2 事業主に対して過重な負担を及ぼすときは提供義務を負わない。
◎必要があると認めるときは、厚生労働大臣から事業主に対し、助言、指導又は勧告を実施。

今後、労働政策審議会障害者雇用分科会の意見を聴いて、具体的な内容は指針を策定。
なお、禁止される差別や合理的配慮の内容として、以下のものなどが想定される

【差別の主な具体例】
募集・採用の機会
〇身体障害、知的障害、精神障害、車いすの利用、人工呼吸器の使用などを理由として採用を拒否することなど

賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用など
障害者であることを理由として、以下のような不当な差別的取扱いを行うこと
〇賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること、昇給をさせないこと
〇研修、現場実習をうけさせないこと
〇食堂や休憩室の利用を認めないなど

【合理的配慮の主な具体例】
募集・採用の配慮
〇問題用紙を点訳・音訳すること・試験などで拡大読書器を利用できるようにすること・試験の回答時間を延長すること・回答方法を工夫することなど

施設の整備、援助を行う者の配置など
〇車いすを利用する方に合わせて、机や作業台の高さを調整すること
〇文字だけでなく口頭での説明を行うこと・口頭だけでなくわかりやすい文書・絵図を用いて説明すること・筆談ができるようにすること
〇手話通訳者・要約筆記者を配置・派遣すること、雇用主との間で調整する相談員を置くこと
〇通勤時のラッシュを避けるため勤務時間を変更することなど

②苦情処理・紛争解決援助について
◎ 事業主は、障害者に対する差別や合理的配慮の提供に係る事項について、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、その自主的な解決を図るよう努める。
◎当該事項に係る紛争は、個別労働紛争解決促進法の特例を設け、都道府県労働局長が必要な助言、指導又は勧告をすることができるものとするとともに、新たに創設する調停制度の対象とする。

③ 法定雇用率の算定基礎の見直しについて
◎法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者を追加【施行期日 平成30年4月1日】。
◎ 法定雇用率は原則5年ごとに見直し。
⇒施行後5年間(平成30年4月1日~平成35年3月31日まで)は猶予期間とし、精神障害者の追加に係る法定雇用率の引き上げ分は、計算式どおりに引き上げないことも可能。※具体的な引上げ幅は、障害者の雇用状況や行政の支援状況等を踏まえ、労働政策審議会障害者雇用分科会で議論。

【法定雇用率の算定式】
法定雇用率=(身体障害者、知的障害者及び精神障害者である常用労働者の数
+失業している身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数)
÷(常用労働者数-除外率相当労働者数+失業者数)

【激変緩和措置の内容】
〇平成25年4月1日~平成30年3月31日 身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率(2.0%)
〇平成30年4月1日~平成35年3月31日 身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率と 身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率との間で政令で定める率
〇平成35年4月1日以降 身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率

【引用元:厚生労働省HP】

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