清流のジョブコーチ〈職場適応援助者〉

障がい者もジョブコーチも会社として支援する

株式会社東海化成 中島さんほか


ジョブコーチの仕事は楽しいと話す中島さん


ジョブコーチをサポートする野村さん


障がい者もジョブコーチ(右)も孤立させないため、周辺業務を組織化することで会社が活性化

仕組み化で進む障がい者雇用

 農業園芸資材の製造販売を行う株式会社東海化成は、2012年から特定非営利活動法人『くらしえん・しごとえん』とコンサルタント契約を結び、様々な支援を受け、企業在籍型ジョブコーチ※を6名配置し、仕組みづくりに積極的に取り組んでいます。今回はジョブコーチの中島さんと、バックオフィスとして障がい者雇用をサポートする野村さん、自らもジョブコーチである常務の景山さんにお話を伺いました。三人はほかの日常業務もこなしながら、障がい者の支援を行っています。

まずは彼らをきちんと知る

 中島さんは、ジョブコーチ養成研修に参加する以前から担当部署で障がい者と関わっていたそうですが、それまではどう接していいのかわからないことが多かったと言います。
 「ジョブコーチ養成研修で言われて心に残っているのは、『障がい者の方が問題を起こしたとき、注意したり叱ったりすることも大切だけれど、それにはそれ以外の場面でしっかり接していることが大切』というひと言でした。まずは彼らをきちんと知ることが大事だなと改めて感じましたね。そうは言っても、コミュニケーションを取ることが苦手な人も多いので、最初は自ら積極的に接するようにしています」。
 もともと人と関わることが好きで、ジョブコーチの仕事は楽しいと話す中島さんは「社内ではひとりの社員として接しながらも、一人ひとりの特性を見極めて仕事の内容や手順などを探っていきます。ジョブコーチとしてのやりがいは、障がい者の方が自分が教えたことをしっかり吸収し、仕事に生かしてくれている場面を見たときですね」と、笑顔を見せます。
 企業在籍型ジョブコーチを企業内に置く場合、企業在籍型職場適応援助促進助成金を受けることができますが、同社ではその複雑な申請業務などをサポートするスタッフとして野村さんを総務部に配置し、業務を円滑にしています。
 中島さんも「何かあったときの家庭とのやり取りや、申請書類の見直しなど、野村さんにいろいろとお願いすることができ助かっています。」と話します。

会社全体で障がい者雇用を

 「会社として障がい者雇用を考えたとき、責任を誰かに偏らせない仕組み作りが重要だと考えました。当社のジョブコーチは現場での実務が多く、デスクワークの時間が十分に取れないのが実情です。そこのサポートも含め障がい者を理解できるスタッフを、総務部に置くことにしたんです。この試みは、社内の多くの人に障がい者雇用を理解してもらうためにも良かったと思います」こう話すのは、常務の景山さん。
 現在、総務部でジョブコーチのサポート役を務めるのは野村さん。「私は、直接現場で関わるわけではありませんが、障がい者の方の能力や、仕事の内容について分かっていないと、現場で頑張るジョブコーチをサポートすることはできません。そのためにもできるだけ生産部に足を運ぶようにしています。実際に接してみて、もっと早くからコミュニケーションを取ればよかったと思いましたね。今はできるだけ顔を覚えてもらえるよう、積極的に声がけをしています」

障がい者自身も、支援者も孤立させないこと

 常務の景山さんはこうも言います。
「これまで障がい者雇用を続けてきて思うのは、とにかく障がい者と周りの支援者を孤立させないということ。そのためには他部署を巻き込んだ仕組みづくり・周辺業務の組織化、そして、会社の方針であるということを浸透させることが大切だと感じています。仕事の技術を伝承していくのと同様に、障がい者雇用のノウハウも次世代にバトンタッチしていかなければ雇用継続は難しくなります。現在の会社の方針を受け継いでもらうためにどうしていくか 、コンサルタントや支援機関に支えてもらいながらの試行錯誤が続きますね。」
 会社全体の方針として仕組みづくりをしながら、障がい者雇用に取り組む株式会社東海化成。その挑戦はまだまだ続きます。

※障がい者を雇用する企業自体が配置するジョブコーチ。また、ジョブコーチには、地域障害者職業センターに配置された「配置型」もあります。

page top